建築旅行としてこれまで幾つかの国を都市や建築をみに旅してきたが、その中で一番印象に残っている国はインドだ。

インドに旅行したのは、大学を卒業したばかりの20代前半で、大学の同期の友人と先輩の3人での旅であった。
インドをメインとして1ヶ月半で韓国、タイ、ネパール、バングラデッシュを含めた5ヶ国を旅し、その間20回飛行機に乗るという今では考えられない強行日程であった。
短期間で多くの都市、建築をまわるため移動時間を減らすためにこの搭乗回数になってしまった。
旅の目的は、インドの古代から近代にかけての建築と近代建築の巨匠と呼ばれるル・コルビュジェのインドでの都市計画、建築をみる事であった。

何故インドかと言うと、御世話になっている建築家に海外の建築を見るならインドに行くべきだと進められたからだ。
学生の頃までは、建築の歴史は主にヨーロッパの歴史を習ってきたので、インド建築にどんなものがあるか想像すら出来なかった。

旅行に出かけたのは4月の乾期の時期にあたり、日中は気温が40℃近くまで上がりこれまで体感した事のない環境でとても厳しい旅であった。また、旅費を切詰めるため一泊数百円の安宿に泊まっていたので、夜は空調もない輻射熱で暖まった部屋で毎晩眠れない夜を過ごしていた。

さて、建築の話であるがインドは文明発祥の地であり、多くの王朝や宗教が誕生した長い歴史のある国で、また多くの民族と文化も有する。
建築も同様に多くの様式や形態が存在する。
僕らが訪れた主な建築は、寺院などの宗教建築や城塞、モスクで、その他にガンジス河や井戸等の水辺空間をみてまわった。

一言でインド建築を語る事は出来ないが、旅行を通して感じた事は、厳しい環境と対峙する建築の力強さと、宗教建築では思いの強さで壮大な建築をつくる人間の力のすごさを感じた。また、水が貴重なインドでは水辺空間や井戸が神聖化され、そういった場所は親水性の高い空間になっている。沖縄に住んでいては感じなかった水辺空間の大事さを教えてもらった。

沖縄に帰ってきて、建築家がインド旅行を勧めてくれた意味が分かった。